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日本工業経済新聞社(群馬)
2022/05/09

【群馬】環境森林部長インタビュー

県環境森林部長に就任した須田恵理子氏。環境分野の最上位計画である群馬県環境基本計画などは実行段階にあるとし「県だけではなく、市町村や民間事業者等と一緒に取り組むことが重要」と語る。2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」では、各種施策を組み合わせて環境と経済の好循環を生み出したいと意気込みを見せる。知事戦略部に新設されたグリーンイノベーション推進監を兼務するなど注目が集まる中、現在の心境や今後の重点施策などについて聞いた。

−部長に就任した抱負と心境をお聞かせ下さい
須田 県が策定した環境基本計画や森林・林業基本計画などは既に実行段階に来ており、さまざまな取り組みを着実に進めることが求められている。5つのゼロ宣言の達成もそうだが、目標達成のためには県だけではなく市町村や民間事業者等と一緒に取り組むことが重要となる。

−グリーンイノベーション推進監と兼務となっていますが
須田 環境森林部長と併せてグリーンイノベーション推進監という新設ポストも拝命した。環境森林部ではなく知事戦略部の中に作られたポストであることから、全庁を挙げて取り組みを進めていくという県の意思の表れ。環境森林部との連携はもとより、全部局と協働して取り組みを進めていきたい。

−災害レジリエンスbP実現に向けての取り組みについて
須田 近年、自然災害が頻発化・激甚化している中、群馬県は比較的災害が少ないと言われてきたが、19年東日本台風では大きな被害が発生した。
群馬県は、利根川という非常に大きな川の上流に位置しており、災害の防止や水源の保全など、県民はもちろん、首都圏の人々の生活や産業を支える大きな基盤となっている。そのため、こうした機能が今後も十分に発揮されるような取り組みを進めていくことが肝要と考えている。
県の総合計画を20年度に策定し、20年後の群馬県が目指す姿を示した。その中心となる7つの柱の一つに、災害レジリエンスbPの実現を掲げ、その中に災害に強い森づくりという項目を設定した。
これを踏まえ、県森林・林業基本計画では、林業の競争力強化などと並んで、森林の強靱化を基本方針で掲げた。計画を着実に進めていくことにより、公益的機能の高度発揮などを達成していくことが重要だと考えている。
また、山地災害危険地区が民有地内に約4500カ所ある。一方で、工事の着手率は7割程度である。国が進める「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」などを活用しながら、森林整備や治山事業などを進め、安心・安全の確保を図っていくことが重要である。

−グリーンイノベーション推進について
須田 脱炭素社会の実現に向け、社会改革や技術革新が世界共通の課題となっている。5つのゼロ宣言の2つ目が温室効果ガス排出量ゼロとなっている。20年後にゼロを目指す中で、県の実行計画では、排出量を13年度比で30年度に50%削減するという高い目標を掲げている。県だけではなく、県民や事業者、市町村などが一丸となった取り組みを行い、脱炭素社会を実現していくことが重要。
3月にゼロ宣言実現のための条例を制定した。一定規模以上の建物を新築あるいは増改築する場合に再生可能エネルギーの導入を義務付けるなど、かなり踏み込んだ内容になっている。
グリーンイノベーションを進めることで社会経済全体が根底から変わり、地域も元気になるといった方向を目指したい。このことは県民の幸福度向上につながると考えている。

−こうしたことを踏まえ、5つのゼロ宣言に向けての方針とは
須田 19年に山本知事が当時の小泉環境大臣に面会する時に表明したのが5つのゼロ宣言。◇自然災害による死者ゼロ◇温室効果ガス排出量ゼロ◇災害時の停電ゼロ◇プラスチックごみゼロ◇食品ロスゼロ−の5つの目標は全部がつながっている。条例による誘導策も含め、各種の施策を組み合わせて、環境と経済の好循環を創出したい。

−県立赤城公園の整備については
須田 県立赤城公園は今までもずっと県民の多くの人に親しまれてきた場所。持続可能な形で管理運営し、そして将来に引き継いでいくことが重要だと考えている。
こうしたことを踏まえて基本構想案を作成し、昨年度にパブリックコメントを実施した。パブリックコメントでは多くの貴重なご意見をいただき、現在、その中身を確認している段階である。基本構想への反映を検討し、構想を固めていきたい。

−群馬の印象や森林の特徴をお聞かせ下さい
須田 元々群馬の出身。県外から帰ってきたら、非常に印象が変わった。以前住んでいた時に感じていたより良い所だと実感する。比較的首都圏に近いだけではなく、山が近く温泉が多いなど、魅力的な県だと改めて感じている。
森林面積の面から見ると、群馬県は3分の2が森林であり、県土に占める森林率は関東地方で一番高い。言い変えれば関東一の森林県だと言える。森林資源の蓄積は、毎年約100万立方m程度増加し、トータルでは約1億立方mとなっている。民有林では約半分が人工林でその多くが利用時期を迎えている。首都圏に近いということは消費者に近いという意味となるため、林業や木材産業には大きなチャンスがあると考えている。
さらに、森林をきちんと利用し健全に維持することは、5つのゼロ宣言にある自然災害による死者ゼロや温室効果ガス排出量ゼロなどに貢献する。森林・林業基本計画の終期である30年に向け、計画に基づき、林業の構造改革や産業基盤の強化、林業木材産業の自立に向けた取り組みを進めていきたい。

−建設産業へメッセージを
須田 災害時の孤立集落解消や災害後の復旧などのご協力に対し、改めて感謝を申し上げたい。災害の未然防止という観点でも、森林の強靱化を今後進めていくので、森林の強靱化と災害の早期復旧の両面で引き続き協力をいただきたい。
また、被災時にツイッターなどで情報を提供していただいたと聞いている。そういった情報は県や市町村などの行政のみならず、県民にも非常に有用な情報となるので、情報発信を引き続きお願いするとともに、こうした取り組みに資するという面からも業界のデジタル化も引き続き進めていただきたい。
県民の安心・安全を確保する意味で、建設産業の技術者減少は災害対応力の低下を招く懸念がある。技術者の確保に向けた取り組みなどについても協力していきたいと考えている。