2021年第12回高校生の「建築甲子園」(主催=日本建築士会連合会、都道府県建築士会)で、全国ベスト8となる青年委員長特別賞を受賞した富山工業高校建築工学科チームに対する表彰式が1日、富山市五福の同校で開催された。
ベスト8は優勝、準優勝に次ぐ賞。同校は第7回と第8回に全国優勝の連覇を達成、第10回にもベスト8・女性委員長特別賞を受賞している。昨年の第11回は新型コロナの影響で延期されており、実質2大会連続のベスト8入りを果たした。
受賞チームは、監督が建築工学科教諭(3年担任)の新村知範氏。選手(生徒)が石尾太一さん、鉾井陽天さんの2人で、ともに同科2年生。
同校校長室で行われた表彰式には、県建築士会の近江吉郎会長、金山泰夫副会長、浦雄嗣専務理事が訪問。学校側は米田由和校長、藤井和弥建築工学科学科長が応対した。
式では、近江会長がチームを代表して鉾井さんに表彰状を手渡した後、金山副会長が連合会からの副賞や記念品、建築士会からの図書カードなどを贈呈、功績をたたえた。
受賞の感想では、石尾さんが「一から自分たちで敷地から調べる経験は初めてであり、本当に良い経験になった。2人での作品づくりでは、それぞれ得意なものとそうでないものはあったが、良い感じで噛み合い、ここまでこれた」、鉾井さんは「コンペは初参加だったが、特別な賞がいただけて嬉しい。新村監督にも感謝したい。初めてのことが多く、何から手を付けて良いか迷いもあったが、協力しながら一つの作品を作り上げる努力があって、良い作品が生まれた。この経験をこれから建築を学ぶ上でも生かしたい」とそれぞれ述べた。
第10回で初めて監督として参加し、2大会連続のベスト8へと導いた新村監督は、「作品づくりは7月から実働がスタートし、夏休み中を中心に活動していた。9月末の締め切りを目標に置いていたが、ちょうど新型コロナの第5波の時期で、夏休みが延長され学校が休校となり、思わぬ打撃を受け、学校での追い込みができなかった。自宅で遠隔ツールを活用しながら、各自が家で出来ることを密に話し合い作業を進めた。思わぬ障害はあったが、前向きに取り組んでくれたのが非常に頼もしかった」と話した上で、「今回の生徒2人はコンペ活動が初めて。手探りのところはあった。(連覇した)先輩方の実績はあるが、プレッシャーはなく、気負わず取り組めた。時間がない中、最後まで妥協なくやってくれたことが評価につながったと思う」と振り返った。
また、「建築甲子園での活動は、自分が住んでいる地域のことを真剣に考え、いろんなことが得られ、実際の建築の勉強以上に様々
なことが学べる。2人がちょっとでも学んでくれたらと思い指導した」と語る。
県建築士会の近江会長は、「全国優勝を連覇した経験が、脈々と伝統として受け継がれてきた成果が現れた。
富山県のまちづくりは、全国的にも評価が高い。各地の建築士が日ごろから実践しているまちづくりの活動が生徒や先生にも伝わり、それが裾野としてつながり結実した成果。社会的な課題を解決するには、建築が非常に重要な役目を果たしていることを、今後も広くPRしていきたい」と話している。
第12回大会は、「地域のくらし−これからの地区センター−」をテーマに作品を募集し、34県58校87点の応募があった。県大会予選で選抜された1作品が全国選手権大会(連合会審査)に進み、今回は34作品で順位が競われた。1次審査でベスト8を選考。8校から提出されたプレゼン動画による最終審査を経て、各賞が決定された。審査委員長は、片山和俊東京藝術大学名誉教授が務めた。
特別賞を受賞した同校の作品「未来を創る〜減築で生まれるセントラルパーク〜」は、富山市中央通りを舞台に、通りの空洞化をポジティブに捉え、減築によって地域に新たな価値を生み、より豊かな暮らしを目指すアイデアを提案。空き店舗や空き地、点在する駐車場を、小規模のポケットパークとし、地域で方向性を定めた減築を進めることで、緑豊かなセントラルパークを街の中心に生み出すもの。アーケードは行政機能や商店、イベント、人々の交流の場として残し、半屋内の自由な空間を創出する計画を立案した。
なお、今後の進路について、石尾さんは建築の施工管理の仕事を希望し、鉾井さんは進学を視野に検討しているという。