大阪市は、水道PFI管路更新事業の公募で事業者が辞退したことを受け、辞退の原因を分析し、今後の方向性を変更した“新たな官民連携プラン”を策定する。当初プランから事業期間や事業量を縮小、事業対象を絞り込み、課題だった「施工条件の不確実性による事業費の増加リスク」の低減を図る。2022年度に新たな官民連携事業の方向性に基づき、民間事業者の意見を広く確認するための市場調査を実施、同年度内に新プランを策定した後、事業者の選定手続きに入る。24年度以降に新プランによる事業開始を目指す。
官民連携手法では、従来型PFI手法(BT方式)を活用することを検討。事業の対象管路を市が指定でき、まとめ発注によるペースアップ効果も見込める。事業者は配水管の更新に係る設計、施工、施工監理を行い、市に引き渡す。当初プランの課題である施工条件の不確実性に対応する形だ。
市がまとめた新たな官民連携事業の方向性によると、事業対象は配水本管のうちの鋳鉄管延長約40`、事業期間は8年程度、事業費は250億〜300億円程度と当初プランより大幅に減額することを検討している。
事業者が辞退した原因の分析では、当初の事業費(3750億円以下)について、▽施工条件の不確実性によるコスト増の影響を提案時に正確に把握できないこと▽民間事業者のリスク負担が大きくなること▽公共工事に係る労務費単価・資材価格などのベース単価が上昇すること―といった理由で市と事業者の考えに乖離(かいり)があったことが分かった。
今後、「長期間かけて管路全体の耐震化率を上げる」という方向性から、南海トラフ巨大地震に備えるための「市域における広域断水の早期回避に資する管路の更新」に重点を置き、「量」から「質」へ視点を変えた新プランをまとめる。
当面は、現行の局体制で管路を整備する方針で、27年度までに市内12のうち三つの「1次配水ブロック」内で配水本管の鋳鉄管の更新などに取り組む。残る九つの同ブロック内の配水本管の鋳鉄管を更新する際に、官民連携手法を活用することとし、更新の大幅なペースアップを図り、巨大地震時の広域断水を回避できる状態の早期実現を目指す。
当初プランでは、市の水道配水管と付属設備を耐震管に更新する計画で、計画から設計、施工までの一連の業務を民間事業者に委託する予定だった。公募時の事業期間では延長1800`以上の更新を求めており、16年間の契約で事業費の上限を3750億円と設定していた。
提供:建通新聞社