国土交通省高知河川国道事務所は、仁淀川水系の流域治水の取り組みの一環として、いの町内で家屋倒壊等氾濫想定区域の計算条件見直し、区域内で推奨する建築構造の検討を進めている。この実現に向け同町は、仁淀川本川堤防の「粘り強い化」に向けた要望活動を国に対し展開している。物部川水系と仁淀川水系の流域治水協議会の中で、高知河川国道事務所の多田直人所長といの町の池田牧子町長が報告した。
いの町は中心市街地の多くが家屋倒壊等氾濫想定区域にあるが、現在進めている立地適正化計画策定の中で、「歴史、利便性、経済性」と「安全性」のバランスを取ったまちづくりを検討している。そこで同事務所では、従来の「氾濫域に構造物がない」「木造2階建ての家屋が倒壊」の計算条件を見直し、実際の建物・構造物を考慮した上で、堤防の粘り強い化などを実施した場合を想定して「住み方」の案を検討している。
現状の案では、河川の氾濫により木造2階建て家屋が倒壊する場合でも、鉄筋コンクリート造なら耐えられる可能性を指摘。場合によっては木造住宅に杭を打つなど、流体力の大きさによって推奨する建築構造を検討する作業を進めている。
いの町が要望している堤防の粘り強い化は、仁淀川左岸側の中心市街地に面した地域を想定している。粘り強い構造にすることで、避難時間を稼ぎ、逃げ遅れを減らすことや、逃げ遅れた場合でも家屋倒壊や浸水深を抑え、被害者を減らすメリットがあり、今後も国へ要望活動を展開する。
協議会では、同事務所以外にも両河川の沿川自治体が2021年度に入ってからの流域治水への取り組みを報告し、情報を共有した。物部川の流域治水の取り組みでは、下流の南国市で浸水想定区域を示しているが、区域内の避難が難しい場合、香南市や香美市など市外に避難することも考えられる。そのため、同事務所では物部川流域全体で広域的な避難を含めた検討を行い、福祉施設などで高齢者の避難が難しい場合も実効性のある避難方法の検討を進めることを説明した。
両協議会では、21年3月に各河川の流域治水の推進方針を策定した。今後さらに各機関で進めている取り組みを反映し、22年3月下旬に第2版をまとめる。
提供:建通新聞社