建通新聞社(神奈川)
2021/12/17
【神奈川】県 用地取得交渉「民間委託」を検討
神奈川県は、公共工事の事業実施の際に必要となる用地取得をさらに進捗させるため、これまで不動産鑑定士や土地家屋調査士などに委託してきた土地の算定評価、登記図面の作成に加え、用地取得交渉業務そのものを「民間業者」に委託するための検討を始める。委託期間や業務報酬・評価の方法など、さまざまな課題を整理した上で、モデル地区を選定し、試行したい考え。スケジュールは未定だが、県では「できるだけ早く実施したい」としている。「民間業者」については、用地補償に関する国の基準や実務に詳しい補償コンサルタントを想定しているとみられる。
〜激甚化、頻発化する災害〜
神奈川県議会第3回定例会本会議で、渡辺紀之議員(伊勢原市、自民党)の一般質問(12月7日)に県県土整備局の大島伸生局長が答えた。
渡辺議員は、災害が激甚化、頻発化する中、「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化対策を加速化し、また県内経済を下支えする上でも、道路、橋梁、港湾、河川の整備など、公共工事を円滑に進めていくことが非常に重要」と指摘。その上で、「公共工事の進捗のためには、事業実施の前提となる用地取得をこれまで以上のペースで進めていくことが必要だ」との考えを示した。
一方で、用地取得については「補償できる内容や補償単価、算定方法などが基準で事細かに定められており、民間企業などが難航箇所で補償額を(勝手に)増額することはできない。しかしながら、用地交渉のノウハウを持つ民間への委託を進めることで、用地取得のスピードアップが可能になるのではないか」と述べ、新たな手法も含め、今後の用地取得の取り組みについてただした。
〜モデル地区で「検討を深める」〜
大島県土整備局長はまず、「風水害や切迫する大規模地震などに備えるため、防災・減災、国土強靱化対策の加速化が求められており、事業用地の取得をより一層、精力的に進めていく必要がある」との認識を示した。併せて、「用地取得は法規や補償などの知識を身に付けた上で、粘り強く交渉を行っていく、大変な時間と労力を要する難しい業務である。これまでも、業務を省力化するため、土地の算定評価・登記に必要となる図面の作成や、建物の補償額算定など、専門性が高い業務については、不動産鑑定士や土地家屋調査士などに委託してきた」との経緯を説明。
その上で、今後さらに用地取得を進捗させるため、従来の委託業務だけではなく、「最も困難な交渉業務そのものを、民間業者に委託することについて新たに検討を始める」と答弁した。さらに、「地権者との交渉が数年にわたるケースもあるため、委託する期間をどうするのか、また業務の成果をどう評価して報酬を支払うのかなど解決すべき課題はある。モデル地区を設定して新たな取り組みを始め、検討を深めていく」との方針を表した。 提供:建通新聞社