日本建築家協会(JIA)北陸支部富山地域会(水野敦会長)は20日、建築を志す青少年を対象にしたOneワク2021「プロジェクトツアー」を、オンラインのライブ配信で開催した。
Oneワクは、未来の建築家を目指す学生が、建築設計にチャレンジするイベントとして18年度からスタート。JIA富山地域会の会員が、日ごろ授業や講義演習が中心の学生に向けて設計の面白さを伝え、次世代の建築家を育成する手助けと協力を行うことにより、若い世代の可能性を広げる目的で例年実施しているもの。
新型コロナに配慮し、昨年はオンラインによる「設計事務所ツアー」を開き、4回目となる今回は、個々の作品に焦点を当てた「プロジェクトツアー」として催した。
県内で計画された大中小の異なる規模を持つ3つの建築作品について、設計を担当したJIA会員が、実際の作業過程などを解説し、富山工業や高岡工芸などの高校生、大学生と専門学校生ら約60人が視聴した。
冒頭、水野会長が、「今回は地域をベースに、地域の発展に貢献するような建築を提案する、若手建築家3名の日々の様子を見てもらう。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の建物について、それぞれ設計がどのように進むのかを紹介する。アイデアがどうやって形に変わるかを見ることができ、ものづくりの楽しさが伝わればと思う。構造だけでなく、建物の大きさ、民間・公共、設計者の個性など、様々な視点から比較できるようなプログラムにした。建築家の職業を知ってもらい、将来の職業として選んでもらえると嬉しい」とあいさつした。
予備知識を説明するプレ講義では、種昴哲氏(スタジオシュワリ)が一般住宅を事例に、クライアントとの出会いからデザインの基本設計、施工会社の選定、実施設計、現場監理、完成までのプロセスについて、設計事務所の役割を解説。
続いて、3名の若手建築家による事例発表が行われた。川尻夕香氏(建築設計mellhips)は「5つのレベルで保つ夫婦の距離感」をテーマに木造の一般住宅、熊谷猛氏(abs一級建築士事務所)は「ABWとBIMデザイン」と題し鉄骨造の民間社屋、忠田祥吾氏(三四五建築研究所)は「みんなの学校をつくる」を題目に、鉄筋コンクリート造の公共学校施設に関しそれぞれ、作品のコンセプトや仕事の過程、苦労した点などのポイントを、図面やパースを交えて分かりやすくプレゼンした。
学生へのメッセージでは、川尻氏が「要望をそのまま形にするのではなく、自分なりの考えで自信を持って提案することが大事。チャレンジ、失敗し経験を積み、いろんな人と議論して、思考を深める練習を繰り返すことが重要」、熊谷氏が「国内外の様々な建築に触れ、時代(情報技術)に乗ること、デジタルだけなく、アナログな感覚も大切にしてほしい」、忠田氏が「建築の仕事は、コミュニケーションが一番大事。日常生活でいろんなことに興味を持ち、インプットを増やしてほしい」とアドバイスした。なお、司会は、道古麻紀子氏(DOKO一級建築士事務所)が務めた。