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建設新聞社
2021/11/12

【東北・福島】アンモニアや水素の受入環境検討/小名浜港CNPの取組

 主な取扱貨物が石炭である福島県いわき市の小名浜港を対象に、カーボンニュートラルポート(CNP)の実現に向けた検討が始まった。今回の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、石炭火力発電所の廃止と新設停止を盛り込んだ共同声明に欧州を中心とした多くの国が賛同するなど脱石炭≠フ流れが全世界的に加速化する中、アンモニアや水素といった次世代エネルギーを受け入れる環境整備が計画されている。12月の検討会では施設計画などが示される予定だ。
 小名浜港は、石炭によるエネルギー供給を支える国際バルク戦略港湾に位置付けられており、2015年実績では輸入貨物の8割を石炭が占める。年間CO2排出量は約1600万dに達し、いわき市外を含む周辺の浜通り地方には石炭火力発電所も多数立地。同港東港地区には、大型化した船舶に対応する大水深岸壁を備えた人工島を整備している。
 しかし脱石炭の取り組みが進む中、政府は昨年10月に温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル」を宣言。臨海部はCO2排出量の多い事業所が集積しているため削減効果が大きいとみられており、国土交通省は小名浜港を含む全国6港7地域をカーボンニュートラルポート(CNP)として形成すべく、ことし1月から地域ごとに検討会をスタートさせた。21年度にCNP形成計画マニュアルをまとめ、各管理者が22年度以降の具体化を見据え形成計画を策定する。
 方向性としては、次世代エネルギーの輸入拠点化も視野に、水素や燃料アンモニアなどを大量かつ安定的に輸入するとともに貯蔵を可能とする受け入れ環境を整備するほか、脱炭素に配慮した港湾機能高度化を図る。
 小名浜港における検討会は、事務局を東北地方整備局・福島県・いわき市が務め、物流会社やエネルギー会社、メーカー、商社といった民間企業など約30団体で構成する。新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)と福島県生コンクリート工業組合などがオブザーバーに座る。
 10月に開かれた第5回検討会では、次世代エネルギー需要の試算方法や、国際水素サプライチェーン構築に向けた取り組み、小名浜港で想定される具体的な施策などを議論した。CNP実現に必要なインフラは、大量の燃料アンモニアと液化水素を受け入れる環境整備として貯蔵タンクやパイプライン、水素ステーションなどが想定される。また、こうした次世代エネルギーを活用した発電技術の開発と実用化、既設の石炭火力発電所におけるバイオマス混焼の検討、荷役機械のFC(燃料電池)化なども検討されている。
 今後、12月に予定する第6回検討会で、小名浜港における次世代エネルギー供給計画として、次世代エネルギーの需要試算結果、輸送形態、施設計画を示す見込み。来年2月の最終第7回検討会で、将来像(案)と今後の取り組みをまとめる。

 提供:建設新聞社