左官河瀬(敦賀市中央町)の河瀬努代表取締役が、21年度における優秀施工者国土交通大臣顕彰の建設マスターに輝いた。
受賞に際し、関係者への深い感謝を心から表し「とにかく左官の魅力を伝えたい」と力を込める。
敦賀高校を卒業後、約1年ほど父親の元で左官業に携わるも「こんなものやってられるか」と東京へ飛び出した。そこで結婚し居酒屋で5年ほど働いた後、店を開こうと地元の敦賀へ。いざ父親に出店資金を借りようとしたところ「もし潰れた時のために、手に職付けて保証が出来るようになったら貸してやる」と言われ左官業を再開。不規則な居酒屋勤務と比較し、子どもと過ごす時間が増えて懐かれるようになり「もう左官屋で良いな」との心境に。当時を振り返り「まんまと騙されてしまったが、お陰で今がある」と微笑む。
育成について「あくまで私の感想だが、求人で来た子は中々長続きしないケースが多い」と語る。「20年ほど前から求人で雇用を続けてきた。入社して1年経過し、『ちょっと仕事を覚えてきたな』と思ったら辞めて、その繰り返し」と実体験を口にする。「確かにしんどいと感じることもあるかもしれない。でも腕さえ磨けば、自分の思い描いた柄を形に出来てしまう」と創造する喜びを強調するものの、「中々魅力が伝わり辛いのか、『左官屋って何する人なの?』と聞かれると本当悲しい」と胸の思いを吐露する。
職業能力開発協会の依頼で7年前から敦賀工業高校で左官技術の出前講座も行う。「昔は大工と左官の違いを聞いても知らない子が殆どだった。今では違いがわかる子が出てきた」と違いを話す。また講座を受けた生徒が「どうしても左官屋に」と、姫路の専門学校を卒業後、左官河瀬に入社。工業生出身の左官屋第一号になって早2年が経過した。地道な教育の成果が、徐々に実を結びつつある。
かわせ・つとむ
54歳 17年度には知事表彰を受賞。「昔は酒だけだったが、今は家族や孫と旅行に行くのが何よりの楽しみ」と顔をほろこばす。