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北陸工業新聞社
2021/10/07

【富山】完工高10億円以上で割引細分化/建設共済保険の制度改定実施/建設業福祉共済団/補償額5000万円も新設

 公益財団法人建設業福祉共済団(東京都港区虎ノ門、茂木繁理事長)は、法定外労災補償制度である「建設共済保険」について、10月から無事故割引率および保険金区分の新設などの制度改定を実施している。
 近年、保険加入企業の構造的変化と完工高の二極分化が進行する中、掛金の収入構造の変化と無事故割引率の調整が課題となっており、15(平成27)年度に実施した無事故割引率2割拡大に伴い、保険金支払い後の掛金の跳ね上がり、完工高区分が上下した際の掛金の割高・割安が顕著となり、歪みが生じていることから、改定により極力是正する。
 主な改定内容は、無事故割引率の適用基準となる完工高区分10億円以上について、現行3区分を9区分に細分化、全体で12区分に改定する。
 保険金の支払いを受けて契約更新を迎える場合は、改定後の割引率を適用。新区分では、完工高5億円以上のランク2の割引率を引き上げ、契約更新後の掛金の跳ね上がりを緩和する。新区分でのランク3の割引率は、一部を除いて引き下げるが、一律の改定は行わず、最長5年間の経過措置を講じる。
 さらに、契約者から建設共済保険の最高補償額である保険金区分「4000万円」では不足との声が寄せられていることに対応。現行4区分(1000万円〜4000万円)に加え、「5000万円」を追加し、全5区分に改定した。
 建設共済保険制度の掛金割合も改定。全体掛金100%のうち、保険事業に82%(現行85%)、労働安全衛生推進事業と育英奨学事業などの共済事業に18%(同15%)を充てるよう変更する。
 同共済団の主力事業である厚生労働省・国土交通省認可の建設共済保険は、建設業界の労災上乗せ補償共済制度の確立を切望する声の高まりを受け、全国建設業協会との特約により、全国初の法定外労災補償制度として、1970(昭和45)年11月に創設。昨年50周年を迎えた。
 建設業に従事する労働者が、業務・通勤災害で死亡、重度の障害または傷病を受けた場合、国の労災保険の給付に上乗せし保険金を支払う制度で、安い掛金でも手厚い補償を受けられるのが特長。基幹契約の「年間完成工事高契約」と、付随契約の「関連事業契約」および「甲型共同企業体契約」がある。
 このうち、年間完成工事高契約は、被災者などに対する追加的補償を行う「被災者補償」と、労働災害に起因した企業の諸費用を補償する「諸費用補償」で構成。労働者福祉の向上、労働災害による企業の経営上の危機に備える制度として、契約数は2万4000社に上る。
 主な特長は(1)建設業の自主的な共済保険で掛金が安い(2)被災者への補償だけでなく、災害発生時に企業が負担する諸費用も補償(3)同一事故で多数被災した場合や契約期間中の複数事故でも補償額の上限なし(4)元請・下請を問わず無記名補償し、同一現場における重複支払いも可能(5)代表者(保険契約者)も補償、掛金は不要−で、経営事項審査では加点評価の対象となる。
 一方、16年度に開始した「労働安全衛生推進事業」は、年間掛金と加入年数に応じた現場の安全衛生用品を頒布するほか、▽現場の女性専用トイレ導入費用に対する助成▽労働安全衛生推進者表彰▽地域に開かれた教育訓練施設への整備助成▽労働安全衛生に関する講習会開催への支援−が対象。女性の就労環境向上のため、20年度からはトイレに加え、女性専用更衣室(ロッカー付き)設置も助成対象に拡大した。
 育英奨学事業は、保険金の支払いのあった被災者(死亡、障害・傷病3級以上)の子供に対し、返済不要の奨学金を継続して給付。20年度は、総額4800万円余りを給付している。
 同共済団では、毎年10月と11月を「建設共済保険加入促進月間」に定め、全国建設業協会や各都道府県建設業協会らの協力を得ながら、各種PR活動を強化。今後も「契約者と業界の発展のために」をモットーに、建設共済保険の制度充実と普及活動を鋭意展開していく方針だ。
 詳しい情報、掛金試算などの問い合わせについては、同共済団(電話03−3591−8451)まで。県内の取扱機関は、富山県建設業協会(電話076−432−5576)となる。

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