高知県教育委員会は、旧陸軍歩兵第44連隊跡地にある建造物の保存修理に向け、基本設計を文化財保存計画協会(東京都千代田区)に委託する。9月定例議会閉会後の10月下旬までに随意契約し、11月から2022年7月までの期間で改修工法や概算工事費をまとめる。その後、22年9月補正予算以降で実施設計費を確保し、早ければ23年度から改修工事に着手する。
44連隊は現在の高知大学朝倉キャンパスの敷地内にあり、旧陸軍の連隊として日露戦争や第二次世界大戦に従事した。現在も朝倉キャンパス西側の5517平方bの敷地に、明治30年代に建設された弾薬庫や講堂が残されている。
これらの建物は基礎のレンガ組積造や小屋組のトラス、小屋裏の垂木と野地板などの構造と意匠を残す近代和風建造物で、戦後は国立印刷局高知出張所の一部として2011年に閉鎖されるまで活用されていた。県教委では、戦争遺跡として保存し、歴史や時代背景を学ぶ場として整備する方針をまとめ、21年度に入り国から土地と建物を購入した。今後は国登録有形文化財への登録を目指す。
基本設計では、まず建設当時の設計図書が存在しないため、建物の損傷状況などを調査し図面を作成し、保存修理に向けた改修工法をまとめる。合わせて建物自体の安全性確保や耐震化のために必要な工法を検討し、概算工事費を算定する。9月補正予算案では基本設計委託料に302万円を計上し、22年度までの債務負担行為として705万円の限度額を設定した。
また9月補正予算案では跡地活用調査委託料として650万円も計上している。文化振興課の主管で、駐車場やトイレ、進入路など一般公開に向け、敷地全体の整備内容を検討する。
提供:建通新聞社