建通新聞社(神奈川)
2021/09/29
【神奈川】県 地籍調査 民間委託働き掛け
神奈川県の大島伸生県土整備局長は、迅速な災害復旧活動や公共事業の効率化などに役立つ地籍調査の促進について、業務の大半を測量会社などに委託できる、民間への包括委託制度の採用を、実施主体である市町村に働き掛けていく考えを示した。こうした手法を積極的に取り入れることで、全国平均と比べても低い値にとどまっている、県内の地籍調査の進ちょく率を上げていきたい考えだ。9月21日に開かれた神奈川県議会本会議で山口美津夫議員(自民党)の一般質問に答えた。
大島局長は、「個々の権利者との境界立ち合いなどを含め、従来職員などが行っていた業務の大半を、測量会社などへ委託できる制度が国土調査法に設けられており、県内では二つの市(鎌倉市、秦野市)が活用している。この委託制度は、担当する職員を十分に確保できない市町村にとっては、調査を進捗させる上で有力な手段となる」との認識を示した。
その上で、津波による浸水被害が想定されている相模湾沿岸の市街地を緊急重点地域として位置付け、優先的に調査を進める「緊急重点地域」の取り組みや、一筆ごとの調査の前に道路などの公共物と民有地の境界を先行して確定させる「街区境界調査」の活用に加え、「この委託制度をより多くの市町村に使ってもらえるよう、未採用の市町村に対し、個別に働き掛けていく」との考えを示した。
加えて、「地籍調査に要する費用の半分を国が負担する仕組みとなっており、この委託制度を多くの市町村が採用した際には、これまで以上の予算が必要になる。国に対し、さまざまな機会を捉えて、必要な予算の確保を要望していく」と述べた。
〜全国でも主流に〜
この民間への包括委託制度について、地籍調査に詳しい県内測量企業の代表は本紙の取材に対して、「全国的にもこうした手法による調査が主流になりつつある」と述べるとともに、「職員が不足している自治体にとっては有効ではないか」との見方を示した。
〜県内進捗率15%〜
一般質問で山口議員は、地籍調査について「土地取引の円滑化や公共工事の効率化が図られるものと認識している」と、その有効性について述べる一方、「本県における地籍調査の現状を見ると、2020年度末で15%と全国平均の52%と比べて極めて低い状況である」と指摘。
その上で、地籍調査の促進に当たり、「市町村が人的に十分な体制を確保できないのであれば、例えば市町村に対して測量会社などの民間活用を促すことは必要ではないか」との考えを述べ、県側の見解を尋ねた。提供:建通新聞社