建通新聞社(神奈川)
2021/09/06
【神奈川】川崎市 JR南武線連続立体で今後の方向性
川崎市は、「JR南武線連続立体交差事業」の検討状況と今後の方向性を市議会まちづくり委員会に報告した。事業費縮減と事業期間短縮に向けてさらに検討したところ、「仮線高架工法」から「別線高架工法」へと変更した場合、事業費が約1387億円に、事業期間が約16年に縮減・短縮できるとの試算結果を示した。「鹿島田駅のペデストリアンデッキが支障となる」など引き続き必要な検討事項が残るものの、改革・改善効果が見込まれることが確認できたといい、今後は「別線高架工法」による事業推進に向け、JR東日本と連携し、国などの関係機関との調整を進める。
JR南武線連続立体交差事業は、矢向駅から武蔵小杉駅までの約4・5`を「仮線高架」形式により高架化し、9カ所の踏切を除却するもの。総事業費は1479億円(うち連立本体は1185億円、関連道路294億円)。2020年度中に都市計画決定を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症を契機として、長期にわたり厳しい財政環境が続くこと、また、人的資源の面で負担が大きいことから、20年度中の手続き実施を見送った。今年5月には、さらなる事業費縮減と事業期間短縮に向け、「別線高架工法」を前提として検討するとした。
今回は、都市交通の円滑化や、分断された市街地の一体化による地域の活性化が図られるJR南武線連続立体交差事業の必要は変わらないと分析。高架高さを見直した「仮線高架工法」と、「別線高架工法」について、事業費と事業費期間などを試算し比較検討した。高架の高さを約12bから約8bに見直した場合の「仮線高架工法」では事業費が約1551億円になる。用地取得から6年目に着工すると想定した事業期間は約21年間。
さらに工法を「別線高架工法」に変更すると総事業費は約1387億円になると算定。高架高さを見直す前の「仮線高架工法」と比べると214億円の縮減になる。事業期間も約16年となり、開かずの踏切解消は鉄道工事に着手してから5年目に見込めるという。構造上などの制約から高架橋の高さは約8bになる。ただ、都市計画道路(矢向鹿島田線)の都市計画変更や、鹿島田駅のペデストリアンデッキの形状変更の検討が必要となる。
この検討結果から市は、「別線高架工法は仮線路を敷設せず、直接高架橋に切り替えるため、仮線路が不要となり「事業費の縮減」が図られることと合わせて、「事業期間の短縮」が図られることで、「開かずの踏切の解消」や「立体交差化による踏切の除却」などの事業効果の早期発現が可能であるとしている。構造工法の変更により、鹿島田駅のペデストリアンデッキが支障となることから、今後はペデストリアンデッキの撤去に伴う動線計画や都市計画上の位置付けなどを整理するとともに、工法変更を踏まえた代替案を作成し、関係機関などの理解を得る。用地取得については、効率的に進めるための民間活用を検討し、課題を整理する。提供:建通新聞社