金沢市発注工事の入札を巡る官製談合事件を受け、市はこのほど、現行の入札制度を検証すべく、臨時の同制度評価委員会を開いた。委員会は今回の事件の引き金となった最低制限価格に関し、職員も事前に知り得ることができない変動型を提案。他の中核市では、算定式にランダム係数や応札平均値を用いている例もあり、市は価格漏えいなど不正行為の防止に向け、制度の見直し案を検討する方針を示した。
事件では、市が発注した土木工事の入札で、市職員が知り合いの業者に最低制限価格を教示したとして、官製談合防止法違反および公契約関係競売入札妨害罪で逮捕され、その後、収賄罪で再逮捕された。
27日に開かれた市議会8月緊急議会では、山野之義市長が職員の逮捕について、「市政に対する信用を失墜させたことを大変重く受け止め、深くお詫び申し上げる」とあらためて陳謝。その上で、「法令遵守と公務員倫理の徹底を図り、一日も早い市政の回復に努める」と述べた。再発防止に向けた職員のコンプライアンス研修と倫理研修はすでに始まっている。
市は、2000(平成12)年に起きた予定価格漏えい事件を受け、職員に対する利害関係者からの働き掛け防止策として、同価格を事前に公表している。ただ、積算ソフトを使えば簡単に弾き出せ、抽選落札の可能性が高くなることが指摘されている。中核市全体でもまだ事前公表が主流となっているが、競争性の確保へ事後公表に移行する自治体も出てきている。
市では、予定価格130万円を超えるすべての工事で最低制限価格制度、8000万以上の総合評価方式適用工事で低入札価格調査制度を導入しており、最低制限価格や低入札価格調査基準価格の算定方法には公契連モデルを採用している。最低制限価格は一定の品質基準を価格で担保できる反面、漏えいなど不正の余地があることがデメリットとされている。
変動型の最低制限価格は今年4月1日現在、中核市62市のうち、45%に当たる28市が採用している。開札時にコンピューターで無作為に決まるランダム係数や、入札額の平均値とする応札平均値などによる算定式があり、価格の漏えい防止につながっている。
評価委からは主な意見として、▽事件の全容を把握した上で、入札制度の見直しを行うべき▽事前に知り得ることのできない変動型の最低制限価格を検討すべき▽品質確保の観点からも最低制限価格の意義を再認識すべき▽工事成績など価格以外の点を評価することも大切▽将来的には予定価格の事後公表についても研究すべき―の5点が挙がった。
会合後、米田満委員長(公認会計士)は「不正のリスクを排除するため、入札が終わるまで誰も最低制限価格が分からないシステムを検討してほしい」と話した。
市は今回の意見を踏まえ、事件の全容を確認した上で、入札制度の見直し案を検討し、あらためて評価委に諮る方針としている。