2020年度の建設工事に関する統計で、県内の出来高が17年ぶりに8000億台を回復したことが明らかになった。公共の数字が大幅に伸び、ここ数年堅調だった民間との比率も5年ぶりに逆転。国土強靭化や災害復旧事業などが寄与した一方、民間はコロナ禍で動きが鈍化した影響がうかがえる。
(田原謙一・常務取締役(兼)報道部長)
国土交通省がまとめた建設総合統計によると、県内建設工事の20年度出来高は総額8119億円で、前年度比12.7%(912億円)のプラス。03年度(8525億円)以来、17年ぶりに8000億台を回復した。
内訳は、公共が前年度比36.5%(1286億円)増の4811億円と大幅に伸びたのに対し、民間は同10.2%(374億円)減の3308億円。現下の情勢も相まって、明暗が分かれた格好だ。
公共は、高いウエートを占める土木(3957億円)が前年度から3割近く増えたことが大きな要因。18〜20年度で予算措置を講じた「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」や災害復旧事業などが数字を押し上げたとみられる。
一方、民間は建築が2413億円と伸び悩み、前年度から1割減。新型コロナウイルスの感染拡大で、企業等の設備投資意欲が減退した影響が考えられ、特に「商業・サービス業用」の落ち込みが目立った。
こうした動きを受け、民間が公共を上回っていた構成比は5年ぶりに逆転。15年度(民間49.5%、公共50.5%)を最後にシフトし、16年度(民間55.9%、公共44.1%)、17年度(民間51.1%、48.9%)、18年度(民間53%、公共47%)、19年度(民間51.1%、公共48.9%)−と推移していたが、20年度は民間40.7%、公共59.3%と大きく転化した。
コロナ禍での民間投資動向は、ワクチン接種等の動きもあって徐々に回復しつつあるが、先行きはまだ不透明な状況。公共は「5か年加速化」と称した新たな強靭化事業(21〜25年度)や相次ぐ災害等で、今後も土木分野を中心に一定の工事量が確保される向きが強い。向こう数年は、公共のウエートが高い市場構造が続きそうだ。
■公共最多は岩手の73%
九州・沖縄の8県で出来高が最も多かったのは、福岡の1兆5880億円。これに熊本(9117億円)、沖縄(8326億円)と続き、本県(8119億円)は4番目だった。
全国47都道府県の公共比率をみると、最も高いのは岩手の72.6%で、次いで高知(71.7%)、福島(70.8%)−など。公共比率が低いのは、千葉(28.8%)をはじめ、埼玉(31.6%)、東京、大阪(各32.1%)、愛知(32.8%)−などの都市圏が目立った。