国土交通省近畿地方整備局は、大戸川ダムの本体工事についても具体的に明記された淀川水系河川整備計画の変更案が、滋賀県や大阪府、京都府など関係6府県知事から「同意する回答を得た」と公表した。これを受け、「(知事意見の)詳細な内容について確認を行った上で、関係府県知事の意見を反映して河川整備計画を速やかに策定する」とした東川直正局長のコメントも公表、8月までには変更計画を策定するとみられる。近畿地整では今後、大戸川ダムについて本体工事に必要な地質調査や詳細設計などに入る予定で、この他の河川整備も含め、予算要求していく考えだ。
関係府県知事が提出した意見のうち、大戸川ダムについて見ると、建設地となる滋賀県からは「本体工事の早期実施」を要望。計画規模を超える洪水に対する治水効果への期待感が示された。また、環境調査の適切な実施や大津信楽線と栗東信楽線の付け替え工事の着実な推進も求めた。
さらに、京都府からは本体工事の「徹底した費用の縮減」、大阪府からも「今後の調査、設計で工事内容を精査し、工事の実施に当たりコスト縮減を図ること」が要望され、約200億円と試算するダム本体関連工事費の詳細な検討が今後、行われることになりそうだ。
この他、ハード対策への意見については、滋賀県から琵琶湖周辺での浸水被害を軽減・回避するため、天ケ瀬ダム再開発事業の早期完了、瀬田川(鹿跳渓谷)の整備の早期実施など、京都府からも桂川の河道掘削などの整備や保津峡狭窄(きょうさく)部の部分的な開削の検討、宇治川での河道掘削や堤防強化、木津川での堤防強化などが挙がった。
大阪府は、淀川大堰下流の橋梁改築の新規事業について府の意見の聴取や関係市との十分な協議を行った上で着手すること、淀川大堰閘門の着実な整備や毛馬排水機場の設備更新など、兵庫県は一庫ダムのダム再生事業による洪水調節容量の拡大など機能強化への積極的な取り組みを求めた。
淀川水系河川整備計画の変更案では、流域全体で治水対策を行う「流域治水」の取り組みを強調。大戸川ダムについては「環境影響をできる限り回避・低減するための環境調査を含め、必要な調査などを行った上で本体工事を実施」と、より具体的に明記した。この他、既存ダムの洪水調節機能の強化、堤防強化、遊水地の活用、淀川本川の橋梁についても事業中の阪神なんば線橋梁の改築に加え、流下能力を確保するために必要となる橋梁の架け替えを早急に検討し、関係機関と調整した上で実施することなどを盛り込んでいる。
提供:建通新聞社