伏木富山港は伏木地区(伏木港)、富山地区(富山港)、新湊地区(富山新港)の3地区で形成し、2011(平成23)年に国際拠点港湾に指定されるなど、物流、交流拠点として重要な役割を担っている。4月1日付で北陸地方整備局伏木富山港湾事務所長に就任した古池清一氏に、抱負とともに今後の取り組みなどを聞いた。
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伏木富山港は日本海側の中央に位置し、中国や韓国、ロシアと対面している。また、富山県は第2次産業のウエイトが全国平均を上回る工業集積地域だ。「地理条件や地域産業を踏まえると必要不可欠な社会基盤。富山県やその背後圏の地域発展に寄与できるよう、港湾機能の確保・向上を進めていかなければならない」と考える。国立公園・立山をはじめとする日本を代表する山岳や、ユネスコが支援する「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟している富山湾。北陸で唯一の世界遺産である五箇山の合掌作り集落など、「富山県には特徴的な自然・文化環境がある。伏木富山港は海からの玄関口として、これらの環境を活かした観光づくりにも寄与できる」と、その優位性を認めている。
富山地区では岸壁の老朽化対策として長寿命化と耐震化の改良を、新湊地区では中央ふ頭岸壁の大型船舶への対応とともに、ふ頭再編に伴う増深改良を推進。伏木地区では外港の安定利用を図るため、防波堤改良を実施している。「国としても、昨今の頻発する自然災害に対応するため『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』の予算を加えており、この機に伏木富山港の整備を着実に促進したい」と意欲を示す。一方で、工事を請け負う建設界の担い手不足を憂慮。「現場見学会などを通して、学生らに『やりがいのある仕事』ということをPRしていきたい。ICTの活用などで効率的に作業できる環境づくりも」と、担い手の確保にも注力していく。
最近の北陸地方の港湾を取りまく情勢について「東南アジアへの生産拠点南下や人口減少・少子高齢化に伴う物流における労働力不足、農林水産品輸出の拡大、カーボンニュートラルの促進、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるより良い社会形成などの大きな変化が起きている」と認識。北陸地方整備局ではこれらの変化に対応し、港湾が地域の持続的な発展に寄与するため「北陸港湾ビジョン日本海北前船構想2030」を今年3月に策定した。「富山県の港湾は地域産業を支えるため、従来も社会の要請に対応してきている。昨今の急激な情勢変化にも順応できるよう、富山県や港湾所在市とも連携し、ビジョンのメニューから最適な施策を展開していきたい」と意気込む。
同事務所の勤務は03年からの2年間以来2回目。11年から3年間は高岡市に出向している。「高岡市の勤務では伏木港の整備や利用促進の業務を担当していたが、地域における社会基盤整備や港湾を通じた観光によるまちづくりを勉強させていただいた」と振り返る。これまでの富山での経験も活かし「『みなと』を通じて富山県の発展に尽力したい」と力を込める。
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こいけ・せいいち 1965年(昭和40)生まれ。石川県出身。石川工業高等専門学校土木工学科卒業後、86(昭和61)年に旧運輸省第一港湾建設局採用。高岡市建設部参事、国土交通省港湾局海岸・防災課専門官、北陸地方整備局港湾空港部港湾計画課長などを経て現職に至る。趣味は旅行。