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日本工業経済新聞社(群馬)
2021/05/24

【群馬】清水部長インタビュー

清水昭芳県土整備部長は群馬建設新聞の単独インタビューに応じた。新たな県土整備プランが2020年12月に策定され、本格的にスタートする2021年度。「チームワーク」をキーワードに災害レジリエンスbPの実現をはじめとした目標の達成に向けて全力を尽くす。21年度の重点施策は「災害復旧の完了」「防災・減災対策の推進」「多様な移動手段の確保」とした。近年、頻発化・激甚化する気象災害に対しては、「19年の東日本台風で溢水した河川の改良などのハード対策と、『逃げ遅れゼロ』に向けた避難行動を促すためのソフト対策が一体となった防災・減災対策を重点的に推進する」と語る。
−部長に就任されての目標と現在の心境をお聞かせください。
清水 部長を拝命し、重責に身が引き締まる思い。21年度の目標は「チームワークで、県民の今を支え、明日の礎を築く」とした。中学生時代に所属していたサッカー部ではロックミュージシャンとして活躍している布袋寅泰氏をはじめとした個性的な仲間と3年間活動していた。最後の1年間は主将を務めたが、その時にチームとしてまとまることの大切さを知った。高校生の時に所属していたソフトボール部では長野国体の時に優勝、福島インターハイで準優勝できたが、チームワークの良さで成し得たと思っている。県土整備部には700人の職員がおり、部全体で協力しあうこともそうだが、例えば一つの係という小さな関係の中でも協力して助け合ってほしい。
また、新型コロナウイルス感染症の終息の兆しが中々見えないが、ニューノーマルへの転換も見据え、頻発化・激甚化する気象災害をはじめ、社会資本の老朽化などさまざまな課題に対応しなければいけない。そのためには、職務や所属に捉われず、チームワークを持って取り組む必要があると考えている。
−新県土整備プランが策定されました。策定の意義と目標を教えてください。
清水 19年の東日本台風では県内観測史上最大の降雨量を記録し、水害や土砂災害により多くの県民の命と財産が失われてしまった。山本一太知事は同規模の災害が毎年のように発生するかもしれないという危機感から19年12月に群馬・気象災害非常事態宣言を発出し、その脅威にしっかりと対応するために新たな県土整備プランを策定したところである。今後は、新たな県土整備プランに基づき「災害レジリエンスbP」の実現に向けて、ハードとソフトが一体となった防災・減災対策を重点的に推進していきたいと考えている。
新しい県土整備プランでは、20年後に目指す将来像として「災害に強く、安定した経済活動が可能な群馬県」「誰もが安全・快適に移動でき、人と人、人と地域のつながりを生み出す群馬県」「地域に愛着や誇りを持ち、良好な社会環境のもとで持続的に暮らせる群馬県」の3つを掲げた。
20年後に目指す将来像を実現するため、最重点政策である「災害レジリエンスbPの実現」をはじめとした各種政策に基づき、社会資本の整備や維持管理を計画的かつ着実に推進していきたい。
−災害レジリエンスbPの実現について、どのような考え方で進めていくのか教えてください。
清水 21年度は20年後の将来を見据えた県政の羅針盤である新・ぐんま総合計画のビジョンと基本計画、そして部の最上位計画である「ぐんま・県土整備プラン2020」が本格的にスタートする年。鏑川や八瀬川など、19年の東日本台風で溢れた河川の堤防嵩上げは22年度までに、利根川や石田川など氾濫すると大きな被害が発生しかねない河川の対策は24年度までに完了させることが目標。21年度も重点的に整備を進める。
水害対策だけでなく土砂災害対策も重要だと考えている。東日本台風で亡くなった4人のうち3人が地すべり、1人は土石流が原因。こうした災害のリスクを軽減するためにも、3月に策定した土砂災害対策推進計画に基づいて進めていく。
この計画は要配慮者利用施設や避難所など、避難が難しい箇所について土砂災害対策のさらなる推進を盛り込んでいる。ハード対策だけではなく、ソフト対策として土砂災害警戒区域内における全ての要配慮者施設で避難確保計画の策定支援も行う。
道路整備についても、災害時にも機能する強靱な道路ネットワーク(レジリエンスネットワーク)という点で重要となる。避難する際はもちろん、災害発生後の救命・救助や支援を行うに当たっても道路がつながっていなければ、陸の孤島となってしまう。現在進めている上信自動車道や西毛広域幹線道路などの幹線道路も、その役割を担っており、これからも積極的に進めていく。
また、電柱と電線が張り巡らされた道路は日本の風物詩といわれることもあるが、電柱の倒壊により道路がふさがれてしまえばネットワークが寸断されてしまう。道路ネットワークの構築に際しては無電柱化、落石対策も大切になってくる。
頻発化・激甚化する気象災害にしっかりと対応していくためには、ハード対策を進めることも重要だが、「逃げ遅れゼロ」に向けた避難行動を促すためのソフト対策が、ますます重要になってくる。21年度は河川の水位や想定される浸水範囲の予測をリアルタイムで行うことのできる「リアルタイム水害リスク情報システム」を構築したいと考えている。また、県民一人ひとりの避難行動計画となるマイタイムラインの作成支援にも取り組む。さらに、危機管理型水位計と河川監視カメラの設置も引き続き行い、避難を促すための情報を伝える取り組みを広げていきたい。
−レジリエンスネットワークとして位置付けられている上信自動車道や西毛広域幹線道路の見通しを教えてください。
清水 上信自動車道は20年6月には渋川市の金井バイパス、川島バイパス、祖母島〜箱島バイパスの3区間約7・2qが開通した。この区間が開通したことによって、レジリエンスネットワークに位置付けられた本路線において、気象災害による道路寸断時の代替路確保が図られる。もちろん、移動時間の短縮効果もあり、混雑時には約3割、時間にして4分間の短縮となる。今後、整備中区間がつながって行けば、さらに効果が高まっていくことになる。
これからは国直轄事業の渋川西バイパスと県事業の吾妻東バイパス2期、吾妻東バイパス、吾妻西バイパス、長野原嬬恋バイパスが進められる。開通時期は吾妻西バイパスが23年度、吾妻東バイパスは26年度、同バイパス2期で27年度を予定している。長野原嬬恋バイパスも29年度開通を目指しており、21年度は道路設計などを行う。
西毛広域幹線道路は安中土木事務所の所長だったこともあり、思い入れが深い道路。3月には安中工区の約1・9qが完成し、全体約28qのうち10・5qが開通した。
高崎西工区は23年度の開通を目指して工事を進め、残る高崎工区・高崎安中工区・安中富岡工区も29年度開通を目標に事業を進めていく。
−自動車交通網全体の整備としてはどのように取り組むのでしょうか。
清水 新たな県土整備プランでは、40年に目指す将来像として「災害に強く、安定した経済活動が可能な群馬県」だけでなく「だれもが安全・快適に移動でき、人と人、人と地域のつながりを生み出す群馬県」も掲げている。政策の1つとして「多様な移動手段の確保」を盛り込んでおり、@物流の効率化と観光振興を支える道路ネットワークの構築Aまちのまとまりをつなぐ道路整備B生活を支える道路整備−の3つを行う。
1つ目の物流・観光の点は、道路整備が産業の発展や観光振興に効果的だと考えている。工業団地や物流拠点と高速道路網の接続や、観光地の周遊性向上を図りたい。
2つ目のまちのまとまりをつなぐという点では、都市計画の観点も踏まえた社会基盤整備が重要。将来にわたって誰もが生活に必要なサービスを持続的に享受できるような社会基盤を構築していかなければいけない。
3つ目の生活を支える道路整備の点は、交通の安全性という観点や普段道路を走っていて渋滞などで不便なところが対象であり、そうした箇所の解消を図りたい。
※2面へつづく