「現場の情報を正確かつ迅速に本社へ伝え、関係自治体との情報共有を局長と連携して行っていく」と話すのは、鉄道建設・運輸施設整備支援機構北陸新幹線建設局の高部徹副局長。
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4月に赴任し、小松鉄道建設所内で在勤する。就任早々、石川県や福井県、沿線の自治体を訪問したほか、北陸新幹線の小松駅、加賀温泉駅や各高架橋、トンネルなど順次現地を確認。自治体訪問では「単に路線ができるだけでなく、開業に伴う波及効果など地元の皆さんから寄せられている期待が大きいということを改めて肌で実感した」と率直に。
北陸新幹線金沢・敦賀間については、敦賀駅周辺の工事の遅れや加賀トンネルの盤ぶくれ対策などで開業時期が延び、「工期の遅延や事業費の増加で沿線の皆様にご迷惑をかけ、申し訳ない気持ちです」と胸の内を吐露する。鉄道・運輸機構は4月、北陸新幹線建設局として組織体制を一新。国土交通相から業務改善命令を受けたことを重く受け止めているとし、その上で「23年度末の金沢・敦賀間開業の実現が信頼を回復するための第一歩」と語気を強める。
同建設局は、地域密着型の組織として北陸新幹線の建設業務に特化した組織だ。福井や敦賀、小松といった北陸地域の拠点において、部長級の職員を配置し、工程や事業費管理に関する責任の明確化を図った。「現場で工事に携わっている職員と工事の施工管理を行う職員との間で認識を共有しつつ、様々な課題を把握し、的確に対応していく」との姿勢を示す。
高部氏は、工程や事業費管理について沿線自治体との情報共有や、現場の情報を正確かつ迅速に本社へ伝えるのが自らの役割としているが、同建設局は技術系の職員が大半を占めている中、自身はこれまで総務や契約の手続きなどを中心に勤務してきた。「事務部門で培ってきた経験を生かし、少しでも一般の視線に近い立場で関係の皆様との情報共有などを通し、お役に立ちたい」。
新幹線の建設は単に路線を造るだけでなく、駅周辺部の整備など面的な広がりがあるという。「長年にわたり、北陸新幹線の整備を切望してきた地域の方がいる。関係者のお力添えによって私どもの事業は実現しえるものだ。建設現場に近い場所で地の利を生かし、沿線自治体と情報共有の拡充を図っていく」と決意を述べた。
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たかべ・とおる 早稲田大学法学部卒。1991年日本鉄道建設公団入社。鉄道建設本部用地部管理課長、本社人事課長などを歴任。「感謝の気持ちを忘れない」という信条を堅持し、新天地で仕事に励む。東京都出身。58歳。