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北陸工業新聞社
2021/05/12

【石川】interview2021/「市民のための施策その調整役として」/金沢市副市長相川一郎氏/市長の意図、全力で補佐していく/日銀跡地や鞍月用地は時機を見極め

 2015年3月の北陸新幹線・金沢開業で国内外から脚光を浴び、多くの観光客が訪れた金沢市。だが、その開業効果も新型コロナウイルス感染拡大で大きく崩れる中、さらなるまちづくりに磨きをかける同市の山野之義市長を補佐する相川一郎副市長にコロナ禍での市政のあり方を聞いた。

 長年、歴代市長の下で金沢市に奉職し、今、副市長の立場で市政をどのように捉えているか。

 「これまで本当に多くの仕事をさせて頂いてきましたが、今、副市長として市議会や経済界、諸団体などの声にしっかり耳を傾けています。山野市長を補佐する立場として、その政策意図を十分に生かしていけるよう、基本は市民の安全安心ですが、市民のためになる仕事の調整をどう果たすべきか。きちんとした基盤をつくっていくことが使命だと感じています」

 北陸新幹線の開業効果で最大の恩恵を受けたと言われる金沢市だが、現在の状況は。

 「6年前、都市政策局長の立場で開業日を迎えました。あの日は朝から夜まで、今までにない感覚で多くの人たちが東京から押し寄せてきました。金沢にとって、とても刺激がありましたし、その上で持続可能な観光を議論したことも事実です。そうして課題が出れば出るほど、次のステップをどう考えるのか。ずっと考え続けていかなければならないと思っています」
 「金沢の強みは歴史や芸術文化といった資産ですが、経済的な面では北陸や北信越地区における企業の支店が多く立地し、そうした支店経済を基盤にした税収があります。製造業がたくさんある訳ではありませんが、景気に左右されることが少なく、税収を確保できる財政基盤があるといえます。そうした点を踏まえ、地元経済界はもちろん、近隣市町や近隣県などと十分に連携を取って、金沢に求められる役割、責任を果たしていきたいと考えています」

 新型コロナウイルス感染拡大が続いているが、その防止対策は。

 「まず第一に、市民の健康、安全安心を医療の面から支えていかなければならないと強く感じています。市として市立病院や保健所などの機関がありますが、専門職の方たちにしかできない仕事を支えていくことの大切さに気づかせて頂きました。基本である市民の健康保持と安全安心の確保の重要性を痛感しています。当然、経済活動は回していかなければなりませんが、その支援策については行政の役割を十分に考え、一生懸命やらせて頂きたい」

 金沢駅から武蔵ヶ辻、香林坊、片町までの都心軸沿い、中心市街地の活性化策は。

 「金沢エムザは新しい事業者の下、当面、事業を継続していく方針が決まり、その努力を見守り、支えていきたい。中心部や金沢都ホテル跡地といった再開発計画については、事業者の方々と連絡を取りながら、どんなことができるのか。どうやれば、次のステップに進めることができるのか。きちんとうかがってから私どもが動くべきだと認識しています」
 「日銀金沢支店の跡地は、これまでと同様、公共が優先して取得するような国の土地に関しては、意向を聞かれる機会が出てきます。行政として態度を表明する時期があり、その辺りを見据えて、どうするかを考えていくべき。金大や同大附属小中学校跡地の時もそうでした」

 金沢外環状道路・海側幹線と駅西50メートル道路の交差部、鞍月地区の市有地はどう活用するのか。海側幹線延伸による北部エリアはどのように捉えていくのか。

 「鞍月の市有地は、土地区画整理事業の保留地として先行的に、年次をかけて取得させてもらった経緯があります。県庁周辺から金沢港の間で唯一残っている広い用地ですが、海側幹線が全線開通した訳でもなく、南新保地区の土地区画整理事業もこれからです。全ての事業が完了した時にどんなことが必要になってくるのか。金沢港周辺も県のクルーズターミナル完成で環境が大きく変わりました。いろんな議論が出ていますが、その辺りを十分見極め、タイミングはあると思います」
 「新たな開発行為については何がプラスになるのか。建て替えるものがあれば、それを優先して、そこで機能が増えればいいですし、単に公共施設を増やすのではなく、家計もそうですが、次のステップを考えて判断するのは行政も同じです」

 ゼロカーボンや持続可能な開発目標(SDGs)など、縦割りから全庁挙げた施策が求められている。

 「一つの部局だけで施策が進まない時代になってきています。新型コロナ対策にしても、医療や福祉の部局だけでなく、経済対策でどんな支援ができるのか。小中学校の衛生環境をどうするのか。市民のニーズも多様化し、いろんな部局がセットで対応しないと成り立ちません。そのため、市役所の中でも広い視野を持った職員を一人でも多く育てていくことです」
 「市長は市民の全責任を負う立場です。山野市長は子育て支援を踏まえた弱者の立場を大事にし、新しい感覚としてはデジタル分野やサスティナビリティ、多様性などの視点でその時代に合った形で施策を展開しています。市民の負託を得た首長の役割をどう補佐できるか。私だけでなく市職員、みんなが考えていることです」

あいかわ・いちろう 1957年、金沢市生まれ。富山大経済学部卒。80年に金沢市役所に入り、総務局財政課長、都市政策局長、総務局長、公益財団法人金沢市スポーツ事業団理事長を経て、2019年4月から現職。ウォーキングが日課。

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