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北陸工業新聞社
2021/04/28

【富山】21年春の褒章/堂田重明氏に黄綬褒章/「地域に根差し、つなぐ仕事を」

 21年春の褒章が発表され、県内から福見建築設計事務所の元代表取締役で、富山県建築士事務所協会の元会長である堂田重明氏が黄綬褒章を受章した。
 多年、建築設計監理業に従事し、関係団体の要職にあって斯業の発展に尽力した功績が認められた。受章については「夢にも思っていなかった。仕事は一人ではできない。所員と同業の方々の代表で頂いたものと感謝している」と述べる。
 高岡工芸高校金属工業科卒業後、親族の勧めで、68(昭和43)年に福見建築設計事務所へ入社。畑違いの学科で学んだハンディをバネに独学で建築を学び、二級・一級建築士試験を1回で合格。50年余りにわたり、「地域に根差した仕事」をモットーに、数多くの設計を手掛けた。
 中でも氏の原点とも言える、25歳の頃に参加し当選した福光町立福光中部小学校の設計コンペが印象に残る。「課題はこれからの新しい教育に対応する学校であり、やりがいのあるテーマだった。従来学校は情報の発信源で、地域が支え、地域と学校が連携し「地域の核」としての役割が大きかった。コンペではこの考えを踏まえ、21世紀の教育を目指し、従来の一斉授業方式から、個別進度学習とチームティーチングを目的とした新しい地域に開かれた学校=オープンスクールを提案し、採用された」。
 さらに、「学習スペースをフレキシブルにするため、当時としては画期的な可動間仕切(スライディングウォール)をパネルメーカーと考案した。廊下部分を8・5メートルの幅広い多目的スペースとし、校舎全体が学習空間となるよう計画した」と説く。また、「オープンスクールは建物だけをオープンにするのではなく、地域に開かれたという意味合いも持つ。福光中部小の取り組みは、全国の公共学校でも初の試みでその後、全国にも普及した」と説明。実際、全国から多くの関係者が見学に訪れ、公立学校のオープンスクール第1号として文部科学省に記録されている。
 その後、黒部市立宇奈月小学校、県立富山中部高校、県立大学新棟といった多数の教育施設を手掛けたほか、警察署や県民会館の耐震補強などの設計も担当。「建築士は人と人、人と建物、人と地域を「つなぐ」大きな役割を担っている。今後もこの考えを基本に仕事をしたい」。
 一方、他業種同様、建築業界でも担い手の確保は喫緊の課題。「昔より設計の仕事がしたいと思う人が少ない気がする。社会から認知してもらえる業種にしたい。我々の時代は徹夜が当然だったが、今は働き方改革による職場の環境改善が不可欠」と強調し、「設計はいろんなことを考える必要があり、責任は重いが、やりがいも大きい。若い人たちには地域に根差し、富山らしい建築を意識して取り組んでほしい」と期待を寄せる。
 08(平成20)年にトリノ(イタリア)で世界建築大会が開かれた際、日本の展示ブースに宇奈月小学校が出展され、「世界的な建築家・安藤忠雄さんの作品と隣り合わせで展示され、びっくりした。今でも記憶に残っている」そうだ。
 どうだ・しげあき 49年7月生まれ。71歳。福見建築設計事務所では取締役、常務取締役を経て、00年代表取締役。19年12月取締役会長。県建築士事務所協会会長、日本建築士事務所協会連合会副会長、県建築士会副会長、日本建築家協会(JIA)北陸支部富山地域会会長、県建築設計監理協同組合理事長など歴任。14年国土交通大臣表彰を受賞。

hokuriku