建通新聞社(神奈川)
2021/04/26
【神奈川】川崎市 河港水門の保存方法検討へ
川崎市は、「河港水門保存方法検討業務」を765万3600円で日本工営神奈川事務所(横浜市中区)に委託した。今後実施される多摩川の高規格堤防整備事業を見据えて、河港水門の将来の在り方を考えるため、補修や移設、再建築などを比較検討する。また、河港水門は、国の登録有形文化財に指定されていることから、類似の文化財の保存事例や関連省庁や有識者からの意見も踏まえて、文化財としてふさわしい在り方を探る。9月30日までに検討成果の取りまとめる予定。
河港水門の所在地は川崎区港町6地内。大正時代に構想された大規模な運河計画の一環で多摩川への出入口として建設され、1928年(昭和3年)に完成した。水門の幅は18・68b、門柱間の幅は9・96b、地面からの高さは約20bで、水門に接続する部分(約80b)が舟だまりとして残存する。
「令和元年東日本台風」の際、河港水門付近では多摩川が計画水位を超えて、水門扉体上部から越水が発生したため、当面の短期対策としてゲートのかさ上げ工事を実施。また河港水門とその周辺について中長期的な在り方を検討するべく、河港水門の構造や損傷状況などについて調査を実施した。
今回委託した業務では、まず河港水門の保存検討を行うに当たって、参考となるような保存方法などの事例を収集整理するとともに、既存の地質調査結果や測量調査結果なども基礎情報として整理する。その事例や調査結果などを参考にして、河港水門を構成する部位・部材の重要性や補修レベル(歴史的価値への配慮レベル)などを設定し、劣化・損傷状況から補修の要否、要補修箇所の補修方法を検討する。
保存方法については補修、移設、再建築などを想定し、関連省庁や有識者からの意見も踏まえて比較検討。さらに国土交通省の高規格堤防整備事業との整合性を図りながらふさわしい保存方法を立案し、概算工事費を算定する。
河港水門の船だまりは近年まで砂利運搬船の陸揚げ施設として利用されてきたが、2020年度から船舶の利用がない。また、港町地区までは高規格堤防が整備されているが、河港水門を含む下流部が未整備となっていて、川港水門と周辺堤防の高さも異なっている。今後、高規格堤防が整備されると、河港水門付近では大規模な盛土が行われることになる。
川崎市では、これらの状況を踏まえて、@水門としての必要性の検討A河港水門周辺の土地利用の検討B文化財としての取り扱い―について検討する考えを今年2月の市議会常任委員会で説明した。高規格堤防関係では、事業主体である国土交通省京浜河川事務所や隣接地権者である味の素との協議も開始し、調整を進めている。提供:建通新聞社