京都市は23日、二条城で計画する城内通路改良工事(バリアフリー化)について、今後の計画等を明らかにした。
令和3年度中に一部着工予定だった城内通路改良工事は、新型コロナウイルス感染症の影響で試験施工が遅れたことから、着工を令和4年度以降に変更。令和3年度に2回目の試験施工を行った上で、埋蔵文化財調査、通路改良設計(実施設計等)を経て、通路改良区工事(第1工区〜第3工区)を進める考え。計画概要は4月23日開催の元離宮二条城保存整備委員会に報告した。
城内通路改良工事は、城内の通路が砂利道で歩きにくく、高齢者や障害者、車いす利用者、ベビーカー、キャリーバッグ利用者等の観覧の支障となっていることに加え、乾燥時の土埃、雨天時の水溜りなど、観覧に支障をきたすような状況にあることから、城内環境向上事業の一環として取り組むもの。良好な観覧環境を整備し、通路のユニバーサル化を図る。
城内の主要通路総延長は1800m。通路改良工事の対象は、(東側の第1工区)二の丸御殿、二の丸庭園外周通路の延長約900m、(北西側の第2工区)本丸から清流園までの主要通路の約500m、(南西側の第3工区)西橋休憩所から桜の園まで梅林エリアの主要通路約400mを想定する。このほか北側一部の通路改良も予定。
通路改良の基本的考え方は、@景観との調和(史跡の景観と調和に配慮)A文化財保存(埋蔵文化財に配慮)B安全性、強度(来城者の安全性、維持管理や工事等に必要な車両の通行に留意)C市民や来城者の理解。
通路改良の方針によると、(史跡の保存に関する事項)では▽通路改良にあたっては現在の砂利敷きを尊重しながら、離宮時代の景観や雰囲気の保全、継承に努める▽舗装に伴う掘削は舗装の強度を満たすことを前提に最小限となるよう配慮▽舗装構造に関しては、埋蔵文化財(遺構面)の保護に慎重を期すため、通路改良予定箇所の埋蔵文化財調査を実施するとともに、舗装材の試験施工を行い決定、(活用に関する事項)では▽ユニバーサルデザインの考え方に加えて、円滑な観覧と維持管理(管理車両の通行など)の両立が図られるようなものとする、(通路改良の内容等に関する合意形成)▽舗装構造、舗装の種類、施工範囲は、記念物部会の委員の意見を聴取するとともに、市民や来城者から理解を得られるものとするよう、試験施工箇所について、来城者にアンケート調査を実施し、二条城にふさわしい通路改良のあり方を検討したうえで決定▽通路改良に向けた現状変更許可については、関係機関と事前協議を行いながら進める−などとした。
市は平成30年度に城内通路整備基礎調査(地下埋設管に関する情報整理等)をキクチコンサルタント(京都市北区)で実施。令和元年度は城内通路整備詳細調査として、地下埋設管詳細調査(地下埋設管のレーダー調査等)を同社で進めた。
通路改良の基本設計、実施設計の策定に向けた基礎データ収集を行うため、令和2年8月に業界団体の協力のもと、試験施工の舗装材を敷設した。施工2ヵ月後の10月の舗装材の強度(損傷状況)を確認した結果、損傷が確認されたため、今後、舗装の損傷状況及び原因を踏まえて、舗装構造や舗装材について再検討する必要があることが明らかとなった。
また試験施工箇所のアンケート結果によると、「歩きやすい」という回答は90%を超えたが、一方で「景観に馴染んでいる」との回答は65%にとどまり、自由回答(108件)の2/3(60件)が「舗装の幅を限定するべき」という趣旨の意見が占めた。
舗装材料、舗装構造等の再検討を行い、より既存の砂利に風合いが近いものを製作して、令和3年夏頃に2回目の試験施工を実施する。施工箇所は@東大手門付近約140uで改良型砂利風舗装A、A唐門付近約100uで改良型砂利風舗装B。構造等は路盤用アスファルト5p+表層アスファルト4pの9p(2層)。
2回目の試験施工にあたっては、埋蔵文化財を保存するため、埋蔵文化財調査(試掘)を行う。通路改良を行う予定の主要通路上についても、今後、埋蔵文化財調査を実施していく。
2回目の試験施工を踏まえ、舗装範囲(舗装幅、舗装位置等)の設定に向けて、利用、景観調和、安全性、管理、コスト(整備及び維持管理コスト)等の検討を行いながら設計を進めていく。
なお市は令和2年10月に城内通路改良基本設計及び一部実施設計を入札し、キクチコンサルタントに決定した。
元離宮二条城保存整備委ではこのほか、平成14年策定の史跡旧二条離宮(二条城)整備計画について、令和元年度策定の史跡旧二条離宮(二条城)保存活用計画を踏まえ、現状の要請に応えるべく、令和2〜3年度にかけて抜本的な見直しによる再策定を行うことを報告。
また案内所の建替え(総合案内所の新設)について、平成28年度末に東大手門の南西箇所に設置(仮設)した総合案内所の設置に係る文化庁の許可期限が令和4年3月となっていることから、令和2年度に建替えについて関係部局と協議、調整した。令和3年度は引き続き関係部局と連携の上、総合案内所の在り方について検討していく考え。