北陸地方整備局河川部は3月30日、近年頻発している激甚な水災害や気候変動による今後の降雨量の増大と水災害の激甚化・頻発化に備え、管内における一級水系の流域治水プロジェクトをとりまとめた。集水域から氾濫域にわたる流域全体のあらゆる関係者(管内全体で延べ213機関)が協働し、流域全体で水災害を軽減させる治水対策「流域治水」への転換を進める。
管内に一級水系は12水系あり、このうち県内および隣県では荒川水系(山形県含む)、阿賀野川水系(福島県含む)、信濃川水系(長野県含む)、関川水系(同)、姫川水系(同)の5水系となっている。
目標達成に向けた工程を短期(概ね5年間)、中期(概ね10―15年間)、中長期(概ね20―30年間)の段階的に示した各水系の流域治水プロジェクト(ロードマップ)をみると、荒川水系は短期で浸水被害が最も大きい岩船駅周辺の浸水深軽減のための河道掘削(岩船駅周辺の小中学校の被害解消)や、田んぼダムの実施及び実施支援、雨水幹線の整備等の流域における対策、住民の防災意識向上のための取組等のソフト対策を実施。中長期で堤防強化対策として水衝部対策、浸透対策や、洪水時に流下阻害となる河口砂州対策を実施する。20年度以降の残事業費は河川対策が約60億円(河道拡幅、堤防整備、河道掘削、水衝部対策、堤防強化(浸透対策)等)、砂防対策が約350億円(飯豊山系直轄砂防事業)、下水道対策が約3億円。
阿賀野川水系は、短期で氾濫被害が甚大となる盆地部、低平地での重大災害を防ぐため堤防整備や河道掘削、中期で狭窄部・扇頂部での流下能力不足解消や、盆地部・低平地での氾濫対策を図るため、横断工作物の改築や河道掘削を実施。20年度以降の残事業費は河川対策が約1275億円(堤防整備、河道掘削、堤防強化、護岸整備、宅地嵩上げ等)、砂防対策全体事業費が約394億円(飯豊山系直轄砂防事業及び滝坂地区直轄地すべり対策事業)、下水道対策が約92億円(雨水貯留施設の整備)。
信濃川水系(千曲川・信濃川)は短期で信濃川中流の狭窄部(大河津分水路河口部)の流下能力向上(山地部掘削、第二床固改築等)や遊水地等の整備、排水ポンプ、雨水貯留施設等の整備、田んぼダムの取組等を推進。信濃川下流では、新潟市街地等での重大な災害の発生を未然に防ぐため、河道掘削、堤防整備(もぐり橋解消、やすらぎ堤概成)、排水ポンプや雨水貯留施設等の整備、田んぼダムの取組等を進める。信濃川中流は、短期で狭窄部(大河津分水路河口部)の流下能力向上(山地部掘削、第二床固改築等)や長岡市街地等での重大な災害の発生を防ぐための河道掘削等を予定。中長期では、新潟市街地等での重大な災害の発生を未然に防ぎ、支派川の負担軽減のため、河道掘削やもぐり橋解消(小須戸橋架替・築堤)を推進。20年度以降の残事業費は河川対策が約6304億円(河道掘削、遊水地、堤防整備、堤防強化、護岸整備、放水路整備、排水機場整備、河川管理施設耐震対策、河川防災ステーション、橋梁架替、災害復旧、大河津分水路改修、大町ダム等再編、裾花川流域ダム再生事業等)、砂防対策が約1131億円(信濃川水系直轄砂防事業、浅間山直轄火山砂防事業、砂防関係施設の整備等)、下水道対策が約895億円(排水ポンプ、雨水貯留施設整備等)。
関川水系は、短期で上越市雨水管理総合計画に基づき、雨水ポンプ施設及び雨水管渠の整備を実施する。引き続き、保倉川放水路の整備に向けた調査検討を推進。そのほか、上流域では、砂防関係施設の整備、治山対策及び森林整備・保全を実施。中長期で関川支川保倉川は、河川整備計画規模の洪水に対応するため、保倉川放水路(700立方メートル/sを分派)整備を実施。また、各支川において洪水氾濫の発生を防止するため、河道掘削や堤防整備を実施するとともに、沿川に住宅等が密集し河道拡幅が困難な儀明川の洪水流量を軽減させるため、その上流に儀明川ダムの建設を行う。20年度以降の残事業費は河川対策が約899億円(保倉川放水路、河道掘削等、下水道対策約23億円(雨水ポンプ施設、雨水管渠等)。
姫川水系は短期で流河川特有の洪水流の強大なエネルギーに対する堤防の安全度を確保するため、西中地区において急流河川対策(護岸)を実施する。上流域の土砂流出抑制等のため、河床低下対策、砂防関係施設の整備、治山対策、森林整備・保全を行う。中長期で急流河川対策を実施し、堤防の侵食に対する安全性が相対的に低い箇所の解消を図るほか、河道掘削および堤防整備を実施し、河川整備計画目標流量に対しての流下断面を確保。また、上流部でも土砂流出抑制等の対策を継続。あわせて、雨水貯留施設、透水性舗装について検討整備を進め、流域全体における流出抑制を図る。20年度以降の残事業費は河川対策が約65億円(急流河川対策、河道掘削、堤防整備等)、砂防対策が約236億円(砂防関係施設の整備)となっている。